代理店のレポートで最初に見るべき指標はどれか
CPAとROASだけを毎月の判断材料にしている会社は、いずれ数字に操作された報告書を承認することになる。最初に見るべきは成果指標そのものではなく、その数字を算出した母数と比較期間の切り方だ。
レポートの数字はどこで恣意的になりうるか
代理店が意図的に嘘をつくケースは稀だが、「都合の良い切り取り方」は日常的に起きる。以下の5点は毎回チェックする価値がある。
- 比較期間の恣意性:投資を絞った月の翌月と比較すればROASは自然に上振れする。「前月比」「前年同月比」のどちらを使うかも、成果が良く見える方を選びがちだ。
- コンバージョン定義:「カート追加」までをCVとするか「決済完了」までとするかで数値は大きく変わる。定義が月の途中で変更されていないかを確認する。
- アトリビューション設定:ラストクリックとデータドリブンでは、同じ実績でも各チャネルへの貢献配分が変わる。設定変更があった月はROASが実態と無関係に動く。
- 除外条件:テスト配信、リターゲティング除外、社内トラフィックの除外などが集計にどう反映されているか。除外基準が緩ければ数字は良く見える。
- 指名検索の混入:すでに商品名や社名を知っている人の検索をCV源として計上すると、広告本来の新規獲得効果が過大評価される。
以下は説明のための仮定値である。月間広告費300万円、全体CV数100件(見かけ上のCPA3万円)のアカウントで、指名検索経由のCVが40件を占めるとする。非指名CVのみで実質CPAを計算すると5万円に跳ね上がる。指名検索を分離しないレポートは、この差を隠したまま「CPA改善」を主張できてしまう。
発注側は毎月何を質問すべきか
細かい指標を全部追うより、次の3つを毎月同じ言葉で聞き続ける方が効果がある。
- 「今月のCV定義は先月と同じか。変更があればその理由は」
- 「今月の比較対象期間はどの基準で選んだか」
- 「指名検索経由のCVは全体の何%を占めるか」
この3つに即答できない、あるいは毎回説明が変わる場合、レポートの数字は都合よく編集されている可能性が高い。
良いレポートはどんな構造になっているか
表にすると差が分かりやすい。
| 要素 | 悪いレポートの状態 | 良いレポートの状態 |
|---|---|---|
| 期間 | 恣意的な単月比較のみ | 直近3ヶ月・6ヶ月の移動平均も併記 |
| CV定義 | 記載なし、または途中変更が不明瞭 | 定義と変更履歴を明記 |
| 指名/非指名 | 合算のみで開示 | 分離して開示 |
| 予算配分の根拠 | 結果の数字のみ | チャネル別・クリエイティブ別の意思決定理由 |
| 悪化時の扱い | 良い指標だけ抜粋 | 悪化した指標も含めて要因分析 |
良いレポートに共通するのは、都合の良い数字を並べることではなく「なぜその数字になったか」を説明する構造を持っている点だ。
代理店を変えるべきサインとは何か
数字そのものより、レポートの「変化のパターン」にサインが出る。
- 成果が落ちた月ほどレポートのページ数が増え、説明が複雑になる
- 3ヶ月以上、同じクリエイティブ・同じ訴求のまま改善提案がない
- 媒体の管理画面へのアクセス権限や生データの共有を渋る
- 質問に対する回答が毎回異なる、または回答が来ない
- 良い指標だけを強調し、悪化した指標に触れない
どれか1つなら偶然の可能性もあるが、2つ以上が同時に起きている場合は、レポートの見せ方そのものが目的化しているサインとして扱った方がいい。