AIに任せていい仕事は「やり直せるか」で決まる
AIに任せていい仕事とダメな仕事は、難しさでは分かれない。間違えたときにやり直せるかどうか、それだけで分かれる。
難しさで線を引くと、おかしなことが起きる。手間のかかる資料づくりを社長が抱え込み、送信ボタンを押すだけの請求書の発送をAIに任せてしまう。前者は間違えても直せるが、後者は送った瞬間に取り消せない。任せる範囲は、この向きで決めるのが先だ。
やり直せる仕事とは何か?
質問は2つでいい。「間違えても後から直せるか」と「間違いが社外やお金に届くか」だ。この2つで4つに分かれる。
| 社内で止まる | 社外やお金に届く | |
|---|---|---|
| 後から直せる | いつでも任せてよい。書類の下書き、社内メモの整理、売上の集計など | 任せてよいが、後で人がまとめて目を通す。社内向けの自動連絡など |
| 後から直せない | 上限を決めて任せる。データの削除や書き換えを伴う作業など | 必ず人が先に確認する。メールの送信、支払い、契約、お知らせの公開 |
右下だけ「必ず人が先に見る」と決める。これだけで、確認する対象は一気に減る。
具体的にはどの作業が右下に入るのか?
現場でよく出てくる作業を並べると、線がはっきりする。
| 作業 | やり直せるか | 決め方 |
|---|---|---|
| お客様へのメール一斉送信 | 送った後は戻せない | 人が先に確認 |
| 請求書の発行と入金の処理 | お金が動く | 人が先に確認 |
| 広告の出稿や予算の増額 | 費用が発生し続ける | 人が先に確認。決めた上限額までは任せてよい |
| 会社のSNSへの投稿 | 公開後は消しても残る | 人が先に確認 |
| 見積書や提案書の下書き | 直せる | そのまま任せる |
| 売上や在庫の集計、日報のまとめ | 直せる | そのまま任せる |
下の2つは、多少間違っても手直しで済む。だから精度が高くなくても、任せた方が時間は浮く。上の4つは、AIがどれだけ賢くなっても人を外してはいけない。
任せる仕組みはどう作ればいいか?
大がかりな仕組みは要らない。守るのは1つだけだ。AIには「下書きを作るところまで」をやらせて、送信や登録は人がボタンを押す。
当社が広告運用の自動化(Adsync)でやっているのも同じ形だ。数字の異常を見つけて改善案を出すところまではAIが常に動かしている。ただし実際の予算変更は下書きとして出すだけで、人が承認して初めて反映される。この形なら、AIが間違えても被害は「下書きが1件おかしい」で終わる。
パソコンの設定でも同じ考え方が使える。AIに渡すのは、中身を見るだけのアカウントにする。送信や支払いができるアカウントは渡さない。
確認が多すぎて回らなくなったらどうするか?
確認する対象を絞らずに始めると、必ず行き詰まる。1日に何十件も承認を求められれば、中身を見ずに通すようになる。それでは確認しない方がましだ。
減らし方は4つある。
- 金額で線を引く。たとえば3万円未満は自動で通す
- 危なそうなものから順に並べ、上から数件だけ人が見る
- 確認は1日2回など時間を決めて、まとめて処理する
- 同じ判断が続いたらルールにして、確認の対象から外す
確認の件数をこなす工夫より、確認すべき対象を絞る工夫の方が効く。
難しさではなく「やり直せるか」で仕分けるだけで、任せられる作業は思ったより広い。まずは今週やった仕事を紙に書き出し、やり直せるものに丸を付けてみるとよい。丸が付いた作業は、今日から任せて構わない。
どの作業から手をつけるか決めかねる場合は、3分でできる無料のAI業務診断を使うと整理しやすい。任せ方を間違えた会社に共通する型はAI導入が失敗する5つのパターンにまとめている。