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AI導入、最初に自動化すべき業務をどう見極めるか

AI導入は、工数がかかっている業務から着手すると失敗しやすい。最初に手を付けるべきは、工数の大小ではなく、判断基準がすでに言語化されている業務だ。

なぜ工数の大きさで選ぶと失敗するのか?

工数が大きい業務は、例外処理や担当者の暗黙知が絡んでいることが多い。AIに任せるには「どういう条件のときにどう判断するか」をルールとして書き出す必要があるが、工数の大きい業務ほどこのルール化に時間がかかる。結果として、AI導入プロジェクトの大半の時間が「業務の棚卸し」に消え、肝心の運用に入る前に予算と気力が尽きる。

ROIは「工数 × 自動化しやすさ(判断の定型度)」で決まる。工数だけを見て優先順位をつけると、この式の半分しか見ていないことになる。

優先順位はどう決めるのか?

業務を「工数」と「判断の定型度(担当者が同じ基準で同じ判断を下せるか)」の2軸で並べると、着手順が見えてくる。

判断の定型度:高い判断の定型度:低い
工数:大きい最優先(投資対効果が最大)保留(先にルール化から着手)
工数:小さい次点(小さく試して実績をつくる)着手しない(自動化コストが見合わない)

判断の定型度は、「同じ状況を3人の担当者に見せたとき、9割以上が同じ判断を下すか」で簡易に測れる。9割を切るなら、その業務はまだAI化の対象ではなく、社内ルールの整備が先になる。

着手してはいけない業務にはどんな特徴があるのか?

こうした業務は「自動化すれば楽になるはず」という期待値が高いほど、実際には手戻りが多く、担当者の負担がむしろ増える。

最初の1件はどう小さく切るのか?

業務プロセス全体ではなく、その中の「判断」の部分だけを切り出す。たとえば請求書処理全体をAI化するのではなく、「金額と支払期日が規定通りかどうかのチェック」だけを対象にする。

以下は前提を置いた仮想のモデルケースだが、月間200件処理していて、判断基準が3パターンに集約できる業務であれば、1〜2週間で検証結果が出る粒度になる。検証期間が1ヶ月を超える設計になっている場合、対象業務が大きすぎるか、判断基準がまだ定型化されていないサインだ。

導入後に工数が増えてしまうのはなぜか?

実際に運用を始めてから工数が増える典型パターンは3つある。

  1. AIの出力を人が全件チェックする体制になり、確認工数がそのまま残る
  2. 例外ケースの後処理(AIが判断できなかった分の手戻り)が新たに発生する
  3. 業務ルールが変わるたびに設定や学習データを再調整するコストがかかる

いずれも、導入前に「判断基準がどれくらい変わりやすいか」を確認していないことが原因になる。ルールが頻繁に変わる業務は、自動化してもメンテナンスコストが工数削減を相殺する。

自社のバックオフィスではどうだったか?

合同会社SUTEKINA JIKANでも、自社のバックオフィス業務でAI導入を進めた際、最初に手を出したのは見積書のレビュー業務だった。金額の妥当性という一見定型的なタスクに見えたが、実際には担当者ごとに「どこまで割引を許容するか」の基準が違っていて、AIの判断に対する手直しが頻発した。

方針を変え、先に着手したのは勤怠集計と請求書の支払期日チェックだった。どちらも判断基準がすでに社内規定として文書化されていて、担当者間のブレがほとんどなかったため、1週間程度の検証で運用に乗せられた。見積書レビューのAI化は、判断基準を先に統一するプロジェクトを別途走らせてから、半年後に再着手している。

最初の1件を工数の大きさで選んでいたら、この順番は逆になっていたはずだ。判断基準が明文化されている業務から始めるという基準は、抽象論ではなく、実際に手戻りの量を分ける分岐点になる。

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