1. Home
  2. Notes
  3. AI導入はどこから始めるか|自動化する業務の優先順位

AI導入はどこから始めるか|自動化する業務の優先順位

AI導入は、工数がかかっている業務から着手すると失敗しやすい。最初に手を付けるべきは、時間の大小ではなく、判断の基準がすでに紙に書き出せている業務だ。

AI導入はどこから始めるべきか

「一番大変な仕事から楽にしたい」と考えるのが自然だが、そこから始めると多くの場合は途中で止まる。大変な仕事ほど、例外の処理やベテランの勘が絡んでいるからだ。AIに任せるには「こういうときはこう判断する」を全部書き出す必要があり、その書き出しだけで数ヶ月かかる。予算と気力が尽きるのは、たいてい運用に入る前だ。

先に手を付けるべきは、判断の基準がすでに社内の規定やマニュアルに書いてある業務になる。効果は「かかっている時間 × 任せやすさ」で決まる。時間だけを見て順番を決めると、掛け算の片方しか見ていないことになる。

優先順位はどう決めるのか

業務を「かかっている時間」と「判断のブレなさ(担当者が変わっても同じ判断になるか)」の2つで並べると、着手する順番が見えてくる。

判断がブレない判断がブレる
時間がかかる最優先。効果が最も大きい保留。先に社内の基準を決める
時間は短い次点。小さく試して実績をつくる手を出さない。手間が見合わない

判断のブレなさは、「同じ状況を3人の担当者に見せたとき、9割以上が同じ答えを出すか」で簡単に測れる。9割を切るなら、その業務はまだAIの出番ではなく、社内でルールを決めるほうが先になる。

具体的にどの業務が候補になるのか

判断がブレにくく、最初の1件に向くのは次のような作業だ。

逆に、次の作業は最初の1件には向かない。

自社のどの作業がどちらに入るかは、業務ごとの自動化メニューに並んでいる項目と突き合わせると整理しやすい。

着手してはいけない業務にはどんな特徴があるか

こうした業務は「自動化すれば楽になるはず」という期待が大きいほど、実際には手戻りが増え、担当者の負担がかえって重くなる。ここで無理に進めるのは、AI導入が失敗する典型パターンの入口でもある。

最初の1件はどう小さく切るのか

業務の流れ全体ではなく、その中の「判断」の部分だけを切り出す。請求書処理を丸ごとAIにするのではなく、「金額と支払期日が規定どおりかのチェック」だけを対象にする。

棚卸しは30分あればできる。手順は3つだ。

  1. 今月その業務が何件発生したかを数える
  2. 判断の分かれ道をいくつ書き出せるか、紙に書いてみる
  3. 3人の担当者に同じ例を見せて、答えが揃うか確かめる

以下は前提を置いた仮の例だが、月に200件発生していて、判断の分かれ道が3つに収まる業務なら、1〜2週間で結果が出る大きさになる。試すのに1ヶ月以上かかる設計になっているなら、対象が大きすぎるか、判断の基準がまだ固まっていないサインだ。

導入後に手間が増えてしまうのはなぜか

運用を始めてから手間が増える典型は3つある。

  1. AIの出したものを人が全件見直す体制になり、確認の手間がそのまま残る
  2. AIが判断できなかった分の後始末が、新しく発生する
  3. 社内ルールが変わるたびに設定を直す手間がかかる

いずれも、導入前に「判断の基準がどれくらい変わりやすいか」を確かめていないことが原因だ。ルールが頻繁に変わる業務は、自動化しても手直しの手間が削減分を食いつぶす。

自社の事務作業ではどうだったか

合同会社SUTEKINA JIKANでも、自社の事務作業でAI導入を進めた際、最初に手を出したのは見積書のレビューだった。金額が妥当かどうかという、一見決まりきった仕事に見えたからだ。ところが実際には担当者ごとに「どこまで値引きを許すか」の基準が違っていて、AIの出した答えへの手直しが頻発した。

方針を変え、先に着手したのは勤怠の集計と、請求書の支払期日チェックだった。どちらも判断の基準がすでに社内規定として書かれていて、担当者によるブレがほとんどなかったため、1週間ほどの試行で運用に乗せられた。見積書のレビューは、判断の基準を先に統一する作業を別に進めてから、半年後に再着手している。

最初の1件を「大変さ」で選んでいたら、この順番は逆になっていたはずだ。基準が書き出せている業務から始めるという判断は、抽象的な心構えではなく、手戻りの量を実際に分ける分岐点になる。

自社のどの業務が最初の1件に当たるかを外から整理してほしい場合は、3分の無料AI業務診断で候補を洗い出せる。

← 記事一覧へ戻る