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AI導入のROIをどう試算するか|工数削減を金額に換算する

工数削減をそのまま人件費削減額として計算するのは誤りだ。削減された時間が何に再配分されるかによって、その時間の金銭的価値はゼロにも数百万円にもなる。

ROIはどう計算すればいいのか

具体的な数字がないと議論が空中戦になるので、仮想モデルを置く。前提はすべて仮の数値であり、実在の企業データではない。

ここまでの計算だと「66.7時間×3,000円=約20万円/月の削減効果」と出したくなる。だがこの20万円はまだ実現していない。あくまで「浮いた時間の理論上の価値」であり、実際のROIはこの後の使い道次第で変わる。

削減した工数は、なぜそのまま金額にならないのか

浮いた66.7時間を担当者5名がどう使うかで、価値は次のように分かれる。

浮いた時間の使い道金額化されるか理由
残業時間が減り、実際に人件費支出が減るされる支出削減として実現、キャッシュに直結
空いた時間で新規営業や既存顧客フォローに充てるされる(間接的)売上増という別の指標に転化する。ただし成果が出るまで時間差がある
空いた時間を他の非効率業務の穴埋めに使う部分的にされる別の工数削減が発生するが、二重に計上しないよう注意が必要
特に何にも使われず、単に業務が楽になったされない心理的な負担軽減はあるが、財務上のリターンはゼロ
人員を削減せず、そのまま同じ人数で同じ業務量をこなすされないコスト構造が変わらないため、削減効果は「机上」のまま

AI導入の失敗の多くは、この表の下2段を上2段だと思い込んで報告してしまうことにある。「時間が減った」という事実と「金額が減った、あるいは増えた」という事実は別のイベントだ。前者は後者の必要条件だが十分条件ではない

導入コストに何を見落としがちなのか

ROIの分母側、つまりコストの計上漏れも頻発する。ライセンス費用や初期構築費だけを見て「安い」と判断するのは危険だ。

これらを含めずに「削減効果20万円 − ライセンス費5万円=月15万円の純増」と報告すると、翌期以降に実態と食い違うことになる。

経営陣にはどう説明すればいいのか

単一の数字を提示するのではなく、シナリオを分けて感度を示す方が信頼される。

シナリオ前提月次の実質効果
保守的浮いた時間の30%のみ他業務に転化約6万円相当
標準浮いた時間の60%が営業・顧客対応に転化約12万円相当+成約率次第の売上効果
楽観的人員配置を見直し、実際に残業代が減少約20万円の実支出削減

この形式なら、「AIを入れれば自動的に儲かる」という誤解を避けつつ、どの条件が満たされればどの程度のリターンになるかを経営陣が判断できる。マーケティング支援事業として支援に入る際も、まずこの前提の言語化から始めることが多い。数字を先に決めるのではなく、「浮いた時間が何に転化される設計になっているか」を導入前に決めておくことが、ROI試算そのものより重要な作業になる。

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