1. Home
  2. Notes
  3. 1人目マーケ担当のKPI、売上目標はなぜ機能しないか

1人目マーケ担当のKPI、売上目標はなぜ機能しないか

1人目のマーケティング担当者に売上目標だけを課すと、早くて3ヶ月、遅くても半年で評価制度そのものが機能しなくなる。売上は本人が単独で動かせる変数ではなく、商品力・価格・営業体制・既存顧客基盤といった外部要因に強く依存するため、成果が出なくても本人の努力不足とは言えず、逆に成果が出ても本人の実力とは言い切れない状態になるからだ。1人目に置くべきなのは「学習速度」を測る指標である。

この記事の前提は仮想モデルとする。従業員30〜100名、BtoB向けのサービスを展開する企業が、マーケティング専任者を初めて採用したケースを想定する。数字はあくまで目安であり、実際の設計時は自社の商流・意思決定サイクルに合わせて調整が必要になる。

なぜ売上直結KPIは1人目マーケで機能しないのか

売上には「タイムラグ」と「多因子性」という2つの構造的な問題がある。マーケティング施策の効果が受注に反映されるまでの期間は、BtoBであれば3〜9ヶ月かかることが一般的だ。半期評価のタイミングで見えているのは、評価期間より前に仕込んだ施策の結果であり、評価対象者が今期やったことの成果ではない。

さらに受注には営業のクロージング力、既存商談の在庫、季節性など本人がコントロールできない要因が絡む。売上を軸に置くと、評価者も本人も「何を改善すれば良かったのか」を語れなくなる。振り返りが「良かった/悪かった」の感想で終わり、次の施策設計に反映されない状態が続くと、1人目マーケは半年〜1年でモチベーションを失うか、無理に売上に近い数字(商談化率など)を追いかけて施策の幅を自ら狭めてしまう。

フェーズ別に置くべきKPIは何か

フェーズ(採用後)主KPI補助KPI売上KPIの扱い
0〜3ヶ月検証本数(週1本以上)施策実行速度(企画〜実施の平均日数)見ない
4〜6ヶ月示唆の質(レベル2以上の比率50%)リード数・商談化率の傾向参考値として記録するが評価には使わない
7〜12ヶ月示唆の質(レベル3の件数)パイプライン貢献額の推計評価の20%程度まで反映可
1年以降事業KPI(売上・LTV)への貢献学習速度は維持指標として継続測定評価の40〜60%まで拡大可

売上を評価に入れるタイミングを遅らせる理由は、施策のタイムラグが解消され、本人の施策と結果の因果関係が説明できるようになるまで待つ必要があるためだ。

検証本数と示唆の質はどう定義するか

検証本数は「仮説・実施方法・結果・次のアクションの4点が文書化された施策」のみを1本と数える。バナーを3種類出しただけでは1本にならない。「A/Bで訴求軸を変えたら開封率がどう変わるか」という仮説があり、結果を見て次の判断を下していることが条件になる。週1本という目安は、1人目が施策の立案から実行までを自走できる状態を想定した数値であり、外部の実行支援(提携パートナーやAdsyncのようなクリエイティブ運用代行)を使う場合はもう少し本数を増やせる。

示唆の質は3段階のレベルで判定する。

レベル定義
1結果の報告のみ「CTRは2.1%でした」
2次の施策仮説への更新「訴求Aの方がCTRが高かったので、次は訴求Aをベースに価格軸を加える」
3事業判断への影響「この訴求はLTVの低い層に強く反応しており、獲得チャネルの優先度を見直すべき」

評価者が半期ごとに全施策のログを見て、レベル2・3の比率を数える。レベル1が続く場合は、本人のスキル不足ではなく、振り返りの型(何を書けばレベル2になるか)が共有されていないケースが多い。

半期評価はどう運用するか

週次の1on1では検証本数と進行中の仮説だけを確認する。数字の評価はしない。月次では示唆の質のログを一緒に見返し、レベル1で止まっている施策があれば「次に何を変えるか」を一緒に言語化する。ここでの介入が半期評価の質を大きく左右する。

半期評価の場では、検証本数×示唆の質のマトリクスをそのまま評価シートに転記する。本数が多くても質が伴わない場合は「実行力はあるが振り返りの型が未熟」、本数が少なくても質が高い場合は「1本あたりの深さは十分だが実行速度に課題」といった具体的な改善テーマが自動的に出てくる。売上や商談化率は別枠で記録するが、フェーズ0〜6ヶ月の評価点には反映しない。この線引きを事前に本人と合意しておかないと、周囲の営業チームから「マーケが数字を出していない」という圧力がかかった際に評価軸がぶれる。

1人目のマーケ担当が半年〜1年でチームの土台を作れるかどうかは、本人の資質だけでなく、この期間に何を測るかという設計次第で大きく変わる。

← 記事一覧へ戻る