日報の作成をAIに任せると何が変わるか
日報の下書きはAIに任せられます。ただし現場の細かい状況は、自分で書き足す必要があります。この2つを分けて考えると、日報のAI活用はうまくいきます。
日報を書くのがなぜ面倒に感じるのか
日報が負担になる理由は、大きく2つあります。
1つ目は、書く時間がかかることです。1日の仕事を思い出しながら文章にすると、それだけで10分から15分かかります。ドライバーや職人など、現場で体を動かす仕事の人ほど、パソコンに向かう時間そのものが負担になります。
2つ目は、内容がバラバラになることです。ある人は細かく書き、ある人は「特になし」の一行で終わります。読む側の管理職からすると、比べにくく、次の指示も出しにくくなります。
この2つの負担を減らすのが、AIの得意なところです。
AIに日報の下書きを任せると何ができるのか
AIが得意なのは、バラバラなメモを、読みやすい文章に整えることです。
例えば、現場で撮った音声メモがあるとします。「午前中は3件配達。1件遅れた。理由は道路工事。午後は倉庫で棚卸し」という話し言葉です。これをAIに読み込ませると、次のような文章に整えてくれます。
午前中は配達を3件行いました。うち1件は道路工事のため到着が遅れました。午後は倉庫で棚卸しを行いました。
箇条書きのメモから始めても同じことができます。「見積書3件作成」「A社に電話、注文確認」とだけ入力しても、AIが丁寧な文章に直してくれます。毎日同じ形式の日報を書く仕事なら、この作業だけでもかなり楽になります。
AIに任せてはいけない部分はどこか
AIに文章を整えてもらうのは、あくまで「言葉を整える作業」です。事実そのものを作る作業ではありません。
特に次の内容は、担当者本人が自分の言葉で書く必要があります。
- 事故やケガなど、トラブルの報告
- お客様からのクレームの内容
- 金額や数量など、間違えると困る数字
AIは、入力された情報をそれらしい文章にすることは得意です。しかし、入力されていない事実を正しく補うことはできません。「遅れた理由は道路工事」と自分で言わなければ、AIは「特に問題なく完了」と書いてしまうこともあります。ここを担当者任せにすると、実際にはトラブルがあったのに、日報だけを見た管理職が気づけない、ということが起こります。
実際にどれくらい時間が変わるのか(仮のモデル)
ここからは、実際の数字ではなく、考え方をつかむための仮のモデルです。
従業員15人の運送会社を想定します。今までは、1人が日報を書くのに1日10分かかっていたとします。15人なら、合計で1日150分、月20日働くとして月3,000分、時間にすると月50時間です。
これを、音声メモとAIでの下書き作成に変えたとします。話すのに1分、AIが整えた文章を確認して直すのに2分、合計3分で終わるとします。1人あたり1日7分の短縮です。15人分では、月20日で1日105分、月2,100分、時間にすると月35時間の短縮になります。
| 今まで | AI活用後 | |
|---|---|---|
| 1人1日の作業時間 | 10分 | 3分 |
| 15人分の1日合計 | 150分 | 45分 |
| 月20日での合計時間 | 50時間 | 15時間 |
この数字はあくまで仮のものです。会社によって、日報の細かさも、業種も違います。自社ではどれくらいの時間になりそうか、目安を知りたい場合は無料のAI業務診断で確認する方法もあります。
まず何から始めればいいか
最初から全社員に導入するのは、おすすめしません。まずは1人の担当者で試すのが安全です。
手順は次の通りです。
- 日報を書くのが得意な人ではなく、逆に苦手な人に協力してもらう
- 1週間、音声メモか箇条書きだけを作ってもらう
- AIに文章化させて、本人が事実の間違いだけ直す
- 直す手間が減ってきたら、対象を2人、3人と増やす
1人で試す期間は、最低でも1週間は続けてください。最初の2、3日は慣れずに戻ってしまう人もいますが、1週間続けると多くの人が話し方に慣れてきます。
導入にかかる費用や、どこまで自社だけでできるかについては、AI導入にかかる費用の考え方も参考にしてください。日報だけなら、無料のAIツールで始められる場合もあります。
個人情報や現場の秘密をAIに入れても大丈夫か
日報には、お客様の名前や住所、社員の体調のことなど、外に出したくない情報が入ることがあります。
無料で使えるAIサービスの中には、入力した内容を学習に使う設定になっているものがあります。設定を変えれば防げる場合も多いですが、設定を確認せずに使うのは避けてください。
特に気をつけたいのは、次の情報です。
- お客様の氏名・住所・電話番号
- 病気やケガなど、社員の健康に関する情報
- 取引先との金額など、外部に知られたくない条件
これらは、名前を「A社」「担当者B」のように仮の名前に置き換えてからAIに入力する、という工夫だけでもリスクを減らせます。会社としてどこまでAIに任せてよいか、ルールを先に決めておくと安心です。業務ごとの整理の仕方は、情報整理の自動化メニューでも取り上げています。
管理職が日報を読むときに気をつけることは
AIが整えた日報は、文章として読みやすくなります。ここに落とし穴があります。
文章が整っていると、内容までしっかりしているように見えてしまいます。実際には、書いた本人が「特に問題なし」としか入力していないだけかもしれません。
管理職は、次の2点を意識してください。
1つ目は、いつもと違う日報を見つけたら、直接声をかけることです。文章の丁寧さではなく、いつもと違う点に注目してください。
2つ目は、AIが整えた文章だけで判断せず、必要なときは元の音声メモや箇条書きも確認できるようにしておくことです。整える前のメモを残しておけば、後から見返すときに役立ちます。
日報を書いた記録は誰の役に立つのか
日報は、その日限りの報告で終わらせるのはもったいないものです。
何年も続けると、日報は「その仕事のやり方」を記録した資料になります。新しく入った人に仕事を教えるとき、過去の日報を読んでもらうと、季節ごとの忙しさや、よくあるトラブルの対応が分かります。
AIで日報を整理していると、後から「道路工事」「クレーム」などの言葉で探しやすくなる、という利点もあります。手書きやバラバラな形式の日報より、同じ形に整った日報のほうが、後から役立てやすいのです。
日報は、面倒な作業から、会社の記録を残す作業に変えられます。まずは1人、身近な担当者から試してみてください。