電話で聞いた注文をAIでそのまま入力する方法
電話の注文内容はAIに聞き取らせて、そのまま注文メモにできます。紙に書いてからパソコンに打ち直す、あの二度手間はほぼなくせます。
「聞いた内容を紙に書いて、あとでエクセルや受注システムに入力し直す」。この作業に毎日1〜2時間使っている会社は多いはずです。なぜこの手間が生まれるのか、AIは何をどこまでやってくれるのか、順番に見ていきます。
なぜ電話注文は二度入力することになるのか
電話が鳴ったら、まず手が空いている人が受話器を取ります。相手が話す品名や数量を、手元のメモ用紙や伝票に書き取ります。電話を切ったあと、そのメモを見ながら受注システムやエクセルに入力し直します。
この「メモに書く」と「システムに打ち直す」の2段階があるせいで、同じ情報を2回書く手間が発生します。しかも電話の相手は早口だったり、聞き取りにくい環境から掛けてきたりします。メモの字が汚くて、あとで自分で読めないこともあります。二度手間なのに、二度目の作業でミスが増える。これが電話注文の入力の実態です。
AIは電話の聞き取りからメモ作りまで何をしてくれるのか
AIに電話の音声を聞かせると、話した内容をそのまま文字にできます。「Aという部品を50個、明日の午前中に届けてほしい」という電話なら、その言葉をそのまま文字にしたあと、品名・数量・納期という項目に分けたメモを作れます。
さらに一歩進めると、そのメモを注文書の形式に整えたり、受注システムに書き込む一歩手前まで用意したりすることもできます。人がやるのは、できあがったメモを見て「間違いないか」を確認し、最後にボタンを押す、この部分だけになります。
電話を切った瞬間には、もう注文書のたたき台ができている。これがAIによる電話注文入力の基本の形です。
AIが作ったメモをそのまま信じてはいけないのはなぜか
ここが一番大事なところです。AIが作ったメモを、確認せずにそのまま受注システムに反映するのは危険です。理由は2つあります。
1つ目は聞き間違いです。「イチマル」と「ジュウ」、「にじゅう」と「にじゅうよん」のように、数字は特に聞き間違いが起きやすい言葉です。電話の音質が悪いと、AIも人間と同じように聞き間違えます。
2つ目は数量や単位の勘違いです。「箱で10」なのか「個で10」なのか、話の流れから人間なら文脈で判断できても、AIは言葉だけを拾ってしまうことがあります。
だからこそ、AIが作ったメモは必ず人が最後に目で見て確認する。この一手間だけは省いてはいけません。確認の一手間を残したまま、書き写す作業だけをなくす。これが正しい使い方です。
卸売業の例で考えるとどれくらい時間が浮くのか
数字で見てみます。以下はあくまで仮の数字を使った試算です。実際の効果は会社によって変わります。
従業員20人ほどの卸売業を例にします。1日に電話注文が30件入ってくるとします。今までは1件の入力に平均5分かかっていました。メモを取り、あとでシステムに打ち直す時間です。
| 従来のやり方 | AIを使ったやり方 | |
|---|---|---|
| 1件あたりの入力時間 | 5分 | 1分 |
| 1日30件の合計時間 | 150分(2時間30分) | 30分 |
| 1日の削減時間 | - | 約2時間 |
| 月20日稼働の削減時間 | - | 約40時間 |
AIが聞き取りとメモ化をやってくれるので、人の作業は「確認して送信する」だけになります。1件あたり1分で終われば、1日で約2時間、月に約40時間が浮く計算になります。この40時間を、値段交渉や新規のお客さん回りに回せるようになります。
聞き取り精度には限界がある?方言や専門語はどうなるか
「うちは方言がきついから無理では」という声をよく聞きます。結論から言うと、方言や業界特有の専門用語は、AIが聞き取りにくい場面のひとつです。
例えば建設業の資材名や、地域でしか通じない品物の呼び方は、最初はAIがうまく聞き取れないことがあります。ただし多くの場合、よく使う言葉のリストをあらかじめAIに渡しておくことで、聞き取りの精度を上げられます。「うちでよく出る品名50個」「よく使う単位の言い方」を事前に登録しておくイメージです。
それでも100%にはなりません。だからこそ前の見出しで書いた「人の最終確認」が欠かせないのです。方言や専門用語が多い業種ほど、最初の数週間は確認を丁寧にやる期間だと割り切ることが大事です。
何から始めればいいのか
いきなり受注システムと全部つなげようとすると、失敗しやすくなります。まず用意するのは次の2つだけです。
- 電話の録音(今の電話機やシステムに録音機能があるか確認する)
- 録音した音声を文字にする仕組み
この2つだけを試してみて、「文字にした内容が実際の注文とどれくらい合っているか」を1〜2週間、自分の目で確かめます。ここで精度に納得できたら、次の段階として注文書の形式に整える、システムに書き込むところまで広げていきます。
最初から完璧を目指さず、まず録音と文字起こしだけ試す。この順番を守ると失敗が減ります。この考え方は電話注文に限らず、受発注・在庫まわりの自動化全般に当てはまります。関連する受発注・在庫の自動化の取り組み方も参考にしてください。
導入費用はどれくらいかかるのか
気になるのが値段です。仕組みの規模や、どこまで自動化するかによって費用は大きく変わります。録音と文字起こしだけの小さい範囲から始めれば、費用を抑えて試すこともできます。
自社の場合はどのくらいの費用感になるのか、最初に相場観を持っておくと判断がしやすくなります。AI導入の費用の考え方にまとめているので、始める前に一度目を通しておくと安心です。
どんな業種に向いていて、どんな業種には向いていないのか
向いているのは、電話注文の内容が「品名・数量・納期」のようにパターン化しやすい業種です。卸売業、部品販売業、飲食店への食材配送、印刷業の注文受付などが当てはまります。話す内容が毎回似ているほど、AIの聞き取りとメモ化の精度が上がります。
逆に向いていないのは、電話の内容が毎回まったく違う相談ごとや、複雑な条件交渉が中心の業種です。例えば介護施設の家族からの体調相談や、士業への込み入った法律相談などは、注文のように定型化しにくいため、AIによる自動メモ化の恩恵が小さくなります。
また電話の音質が極端に悪い環境(工場内の騒音がひどい場所など)も、聞き取り精度が落ちやすいので注意が必要です。
まとめ
電話注文の二重入力は、メモを書く作業とシステムに打ち直す作業の2段階があるために生まれます。AIに音声を聞かせれば、この2段階を1段階に近づけられます。ただし聞き間違いや数量の勘違いは起こり得るので、人の最終確認は必ず残してください。
仮の試算では、1件5分だった入力が1分になり、1日30件で約2時間、月40時間の削減も見込めます。まずは録音と文字起こしだけを1〜2週間試して、自社の注文パターンにどれだけ合うかを確かめるところから始めてみてください。自社の業務のどこから手をつけるべきか迷う場合は、無料のAI業務診断で現状を整理してみるのもひとつの方法です。