シフト表作りはAIでどこまで楽になるか|条件の伝え方と直し方
シフト表の下書きは、AIに作らせることができます。条件を文章で伝えれば、1か月分の候補表を数分で出してくれます。
ただし、急な休みの連絡や職場の人間関係への配慮は、人が最後に見る必要があります。AIは「誰が休みたいか」は分かりますが、「誰と誰を同じ日に入れると気まずいか」までは分かりません。この記事では、条件の伝え方・エクセルとのやり取り・出てきた表の直し方まで、実際の手順で説明します。
シフト表作りはなぜこんなに大変なのか
シフト表作りが大変な理由は、条件が一度にたくさん重なるからです。
例えば介護施設なら、こんな条件が同時に絡みます。
- 各職員の休み希望(月に何日、いつが休みたいか)
- 各時間帯に必要な人数(夜勤は最低2人、日勤は4人など)
- 資格を持つ人が必ず1人はいる必要がある時間帯
- 夜勤明けの人を、次の日の早番に入れられないルール
- 連続で働ける日数の上限
これを人が手で組むと、1か所動かすと他がずれます。25人分の希望を紙やエクセルで見比べながら組むと、丸1日かかっても終わらないことがあります。しかも、その条件の多くは担当者の頭の中にしかありません。ここが、AIに任せるときの最初の壁になります。
AIは何をどこまでやってくれるのか
AIは、条件を文章で伝えると、その条件に合う表を作ります。
例えば「職員は25人。夜勤は必ず2人。資格を持つAさんとBさんは夜勤に1人以上入れる。Cさんは毎週水曜が休み希望」と条件を並べて伝えます。すると、AIはその条件を満たす1か月分の表を作ります。
条件を変えたいときも、「Dさんの休みを火曜から木曜に変えて、他は同じにして」と伝えれば、表全体を作り直します。人の手でやると、1か所直すだけで他の日も見直す必要がありますが、その手間がかなり減ります。
AIにできること、できないことを先に分けておくと、期待外れが起きません。
| やること | AIに任せられるか | 理由 |
|---|---|---|
| 休み希望を一覧にまとめる | 任せられる | 表の整理はAIが得意 |
| 条件に合う1か月分の表を組む | 任せられる | 条件が文章で書けるなら作れる |
| 「この2人は同じ日に入れない」の反映 | 条件として書けば任せられる | 書かなければAIには分からない |
| 当日の急な欠勤の穴埋め | 人がやる | その場の電話とお願いが必要 |
| 法律や協定に合っているかの最終確認 | 人がやる | 条件そのものの正しさはAIは判断できない |
条件はどう書けば伝わるのか
いちばん大事なのは、担当者の頭の中にある条件を、全部文章に書き出すことです。
書き方は難しくありません。次のように、箇条書きで並べるだけで十分です。
来月(10月1日〜31日)のシフト表を作ってください。 - 職員は25人。名前は別の表で渡します。 - 勤務は早番(7時〜16時)、日勤(9時〜18時)、遅番(11時〜20時)、夜勤(16時〜翌9時)の4種類。 - 夜勤は毎日2人。うち1人は資格を持つ人(A、B、E、Fのいずれか)。 - 日勤は毎日4人以上。土日は5人以上。 - 夜勤の翌日は必ず休み。 - 連続勤務は5日まで。 - 各職員の休みは月9日。休み希望は別の表のとおりで、月2回までは必ず反映してください。 - 結果は、縦に職員名、横に日付の表で出してください。
この形で伝えると、AIは条件を1つずつ守って表を作ります。「いい感じに作って」だけでは、どの条件を優先すればいいか分からず、資格を持つ人がいない夜勤ができたりします。
コツは2つあります。1つ目は、数字で書けるものは全部数字にすることです。「夜勤は足りるように」ではなく「夜勤は毎日2人」と書きます。2つ目は、「絶対に守る条件」と「できれば守る条件」を分けることです。「休み希望は月2回までは必ず、3回目以降はできれば」のように書くと、条件がぶつかったときにAIが迷いません。
エクセルの希望表はどう渡して、どう受け取るのか
多くの職場では、休み希望はエクセルか紙で集めています。AIに渡すときは、エクセルの表をそのままコピーして、指示文の下に貼り付けるだけで通じます。縦に名前、横に日付、休み希望の日に「休」と書いた表なら、AIはそのまま読み取れます。
紙で集めている場合は、まず担当者がエクセルに写す作業が残ります。ここだけは今のところ人の手が要ります。
出てきた表は、「エクセルに貼れる形で出してください」と伝えると、そのままコピーしてエクセルに貼り付けられます。いつも使っているシフト表のひな形に貼り直せば、今までと同じ見た目で配れます。
1つ注意があります。職員の本名や個人の事情をそのままAIに入れるのは避けてください。名前はA・B・Cのような記号や職員番号に置き換え、表が出てきてから手元で本名に戻します。この置き換えは、エクセルの置換機能を使えば数分で終わります。
出てきた表はどう見直せばいいのか
AIが作った表は、そのまま配らず、必ず担当者が見直します。見るところは決まっています。
- 夜勤に資格を持つ人が毎日入っているか
- 夜勤明けの翌日が休みになっているか
- 同じ人に休みが偏っていないか、連勤が上限を超えていないか
- 休み希望が反映されているか
直したいところが見つかったら、表を作り直してもらいます。このとき「全部作り直して」と言うと、直っていた場所まで変わってしまいます。「10月12日の夜勤をDさんからGさんに変えて、それ以外は変えないで」のように、変える場所と変えない場所を両方伝えるのがコツです。
見直しにかかる時間は、最初の1〜2回は長めです。AIの癖が分かってくると、見るポイントが絞れて、2〜3回目からは30分程度で終わるようになります。
AIが苦手なことは何か
AIが苦手なのは、数字や条件で表せないことです。
- 急な休みの連絡(今朝、熱が出て休みたいという電話)
- 「この2人は同じ日に入れると気まずい」という人間関係の事情
- 「新人だから、必ず先輩と一緒に組みたい」という現場の暗黙の判断
- 職員の体調や家庭の事情の変化に応じた微調整
ただし、このうち人間関係や新人の組み合わせは、条件として書けば反映できます。「HさんとIさんは同じ勤務に入れない」「Jさんは必ずA・B・Eの誰かと同じ勤務にする」と書けばよいだけです。本当にAIに任せられないのは、当日の穴埋めのように、その場で電話をかけてお願いする種類の仕事です。
実際どれくらい楽になるのか(仮のモデルで見てみる)
数字で、どれくらい時間が浮くか見てみます。以下はあくまで仮のモデルで、実際の効果は施設や条件によって変わります。
従業員25人の介護施設で、毎月のシフト表作りにかかる時間を比べます。
| 作業 | AIを使う前 | AIを使った後 |
|---|---|---|
| 休み希望を集めて整理する | 2時間 | 30分 |
| 条件に合わせて表を組む | 4時間 | 1時間 |
| 確認して細かく直す | 2時間 | 30分 |
| 合計 | 8時間 | 2時間 |
この仮モデルでは、1回のシフト作成が8時間から2時間に減っています。月1回の作業なら、月に6時間浮く計算です。浮いた時間を、職員との面談や現場の見回りに使えます。
まずどうやって始めればいいのか
最初から全部の業務にAIを使う必要はありません。まず1か月分だけ、試しにAIに作らせてみるのがおすすめです。
- いつもエクセルや紙で使っている休み希望の一覧を用意します。
- 必要な人数や資格の条件を、上の例のように箇条書きでまとめます。
- 名前を記号に置き換えてから、条件と希望表をAIに渡して、1か月分の表を作らせます。
- 出てきた表を、いつも見ている担当者がチェックします。
- 直したい部分を「ここだけ変えて」と伝えて、作り直してもらいます。
この1か月分の試しは、今のシフト表と並べて見比べるだけでも十分です。うまくいけば次の月から本番で使い、うまくいかなくても、どの条件が伝わっていなかったかが分かります。どこから手を付けるか迷う場合は、無料のAI業務診断で今の作業を整理してみるのも一つの方法です。
失敗しやすいポイントは何か
いちばん多い失敗は、条件を細かく伝えないことです。
「いい感じにシフトを作って」だけ伝えると、AIはどの条件を優先すればいいか分かりません。結果、資格を持つ人がいない時間帯ができたり、同じ人が続けて夜勤に入る表ができたりします。
条件を伝えるときは、次のように具体的に書くことが大切です。
- 「夜勤は必ず2人」ではなく「夜勤は必ず2人、うち1人は資格保持者」
- 「休み希望を優先」ではなく「休み希望は月2回まで優先、3回目以降は相談」
もう1つの失敗は、最初の1回でうまくいかず、やめてしまうことです。条件の書き漏れは、出てきた表を見て初めて気づくものです。1回目は「条件の抜けを見つける回」と割り切って、2回目・3回目で条件を足していけば、使える表に近づきます。導入がうまくいかない典型例は、AI導入が失敗する5つのパターンにもまとめていますので、始める前に目を通しておくと安心です。
法律のルールはAIに任せて大丈夫か
休憩時間や連続勤務の上限など、労働基準法に関わるルールは、AIに任せきりにしないことが大切です。
AIは「伝えられた条件を守って表を作る」ことは得意ですが、その条件自体が法律に合っているかどうかまでは、必ずしも正しく判断できません。例えば「1週間の勤務時間の上限」や「休憩の取り方」は、施設や会社ごとに労使協定で決まっているルールがあります。このルールを、条件として最初にAIへ正しく伝えておく必要があります。
表が出来上がった後も、担当者か社会保険労務士など、法律に詳しい人が一度確認する流れを作っておくと安心です。AIが作った表をそのまま信じて配ってしまうのが、一番避けたい失敗です。
導入にかかる費用はどう考えればいいか
シフト表作りにAIを使う場合、専用のシステムを新しく契約する方法と、今使っているAIの仕組みをそのまま使う方法があります。
専用システムを入れる場合は、職員1人あたり月に数百円かかることが多く、25人なら月に数千円程度が目安になります。一方、すでに契約しているAIを使う場合は、追加の費用がほとんどかからないこともあります。まず試すだけなら、無料で使えるAIでも上の手順は動きます。どちらが自社に合うかは、今の使い方や予算によって変わりますので、AI導入の費用の考え方を先に確認しておくと、契約前の判断がしやすくなります。
結局シフト表作りはAIに任せていいのか
下書きを作る部分は、AIに任せて問題ありません。時間のかかる「条件をそろえて表を組む」作業が、大きく減ります。
ただし、急な休みの調整や、法律のルールの最終確認は、これからも人がやる仕事です。担当者の頭の中にある条件を文章に書き出すところから始めて、まず1か月だけ試してみてください。