1. Home
  2. Notes
  3. 給与計算の手間、AIでどこまで減らせるか

給与計算の手間、AIでどこまで減らせるか

給与計算の集計作業は、AIを使えば大きく減らせます。勤怠表のデータから残業代や社会保険の控除額まで、AIが自動で計算してくれるからです。

ただし「全部AIに任せられる」わけではありません。どこまで任せられて、どこは人がやるべきか。岐阜県高山市の建設会社を例に、具体的な数字で見ていきます。

給与計算にどれくらい時間がかかっているか

まず前提となるモデルを決めます。従業員35人の建設会社で、給与計算の担当者が1人いる場合です。現場は職人が多く、残業や休日出勤の申告もばらばらな形で届きます。

このモデルだと、毎月の給与計算にかかる時間はだいたい12時間です。内訳は次の通りです。

作業内容現状(人の手作業)
勤怠表の集計3時間
残業代の計算2時間
社会保険料・税金の控除額の計算3時間
給与明細の作成2時間
最終チェック・修正2時間
合計12時間

12時間というと、1日8時間労働で考えるとほぼ1.5日分です。毎月これだけの時間を給与計算だけに使っている計算になります。

AIは給与計算の何をやってくれるのか

AIが得意なのは「決まったルールに沿って集計する」作業です。勤怠表のデータを読み込んで、残業時間や休日出勤の時間を自動で集計します。

控除額の計算も同じです。社会保険料や所得税、住民税といった控除額は、率や表がすでに決まっています。この表にあてはめて計算する作業は、AIにやらせても人がやっても答えは同じです。だったらAIに任せた方が速いし、計算ミスも減ります。

先ほどのモデルで言うと、勤怠表の集計は3時間から20分程度に、残業代の計算は2時間から10分程度に、控除額の計算は3時間から20分程度に減らせる見込みです。給与明細の作成も、決まった形式に数字を入れるだけなら1時間ほど短縮できます。

合計すると、12時間かかっていた作業が2時間台まで減る計算になります。ただしこれは「AIが全部正しく動いた場合」の話です。実際にはチェックの時間を必ず残す必要があります。

AIにできないことは何か

ここが一番大事なところです。AIは「決まったルールの計算」は得意ですが、「ルールそのものを判断すること」は苦手です。

例えば次のようなことは、人が確認する必要があります。

これらは「今月だけ特別なこと」が起きたときに、AIが自分で気づいて正しく判断してくれるとは限りません。設定を人が入れてあげて、初めて正しく計算されます。

つまりAIは「毎月同じルールで繰り返す部分」を引き受けてくれる道具です。「今月だけの例外」を見つけて判断するのは、これまで通り人の仕事です。

導入はどう進めればいいか

いきなり全社員分を切り替えるのは危険です。順番を追って進めるやり方をおすすめします。

  1. 今使っている勤怠表と給与明細のひな形を用意する
  2. 過去2〜3か月分のデータを使って、AIに試しに計算させてみる
  3. 人が手で計算した結果と、AIが出した結果を突き合わせる
  4. 差が出た部分の原因を確認し、設定を直す
  5. 問題がなければ、実際の月の給与計算から本番運用に切り替える

この試しの期間は、最低でも1〜2か月は見ておいた方がいいです。急いで切り替えると、給与の支払いが間違ったまま進んでしまう恐れがあります。

どの会社に頼めばいいか迷う場合は、依頼先の選び方を先に確認しておくと判断しやすくなります。依頼先の選び方には、頼める相手の種類ごとの特徴がまとめてあります。

よくある失敗は何か

一番多い失敗は、勤怠表の形式が原因で起きます。長年同じ手書きの用紙や、独自の表計算を使っている会社は多いです。この形式のままではAIが読み込めないことがあります。

例えば「休憩時間の書き方が現場ごとに違う」「出勤時刻を斜線で消して手書きで直している」といった状態です。人が見れば分かりますが、AIには読み取れません。この場合、勤怠表の取り方を先に整えるところから始める必要があります。

もう一つの失敗は、最初のチェックを省略してしまうことです。「AIが計算したから大丈夫」と思い込んで、そのまま給与を支払ってしまうケースがあります。最初の数か月は、必ず人が全員分をチェックする期間を作ってください。

費用はどれくらいかかるか

給与計算をAIで自動化するための道具は、月々の利用料がかかるものがほとんどです。従業員1人あたり月300〜500円程度が目安です。35人の会社なら、月1万円〜1万7千円程度になります。

これに加えて、最初に設定する費用がかかる場合があります。勤怠表や給与のルールを道具に合わせて設定する作業です。会社の給与体系が複雑なほど、この設定に時間がかかります。

費用の考え方や、安く抑えるための工夫についてはAI導入の費用の考え方に詳しくまとめています。国のIT導入補助金など、全国で使える制度を使えば、最初の設定費用を抑えられる場合もあります。高山市など各地の自治体にも独自の支援制度がある場合があるので、地元の商工会議所や商工課に確認してみるといいでしょう。

社会保険労務士との役割はどう分けるか

給与計算をAIに任せても、社会保険労務士の仕事がなくなるわけではありません。むしろ役割がはっきり分かれます。

AIが担当するのは、毎月同じ計算を繰り返す部分です。社会保険労務士が担当するのは、法律の変更をいつ・どう反映するか判断する部分、就業規則にもとづいた手当の設計、労使トラブルが起きたときの相談対応です。

高山市の建設業でAIによる給与計算を検討する場合も、この役割分担を最初に決めておくと迷いません。AIに集計と計算を任せて、社会保険労務士には制度が変わるタイミングの確認をお願いする、という分け方が現実的です。

結局、給与計算はAIにどこまで任せられるか

35人規模の建設会社であれば、月12時間かかっていた給与計算を2〜3時間程度まで減らせる可能性があります。減った時間は、現場との連絡や見積書の作成など、他の仕事に回せます。

ただし任せられるのは「決まったルールの計算」だけです。法律の変更や特別な手当の判断は、これからも人が確認する必要があります。この線引きを最初にはっきりさせておくことが、失敗しないための一番のポイントです。

自社の給与計算のどの部分をAIに任せられそうか分からない場合は、無料のAI業務診断で現状の作業を整理してみるのも一つの方法です。建設業ならではの手当や勤怠の管理は、業種ごとに事情が違うため、専門的な相談も検討してみてください。

← 記事一覧へ戻る