取引先ごとの注文履歴、AIで整理できるか
注文履歴の整理は、今ある注文書やメールをAIに読み込ませるだけでかなり片付きます。新しいシステムを入れる必要はない場合がほとんどです。
取引先ごとに注文の受け方が違って、確認するたびに探し回っている。そんな悩みは卸売業でよく聞きます。ここでは仮想の会社を例に、具体的な手順を見ていきます。
注文履歴の整理に、今どれくらい時間がかかっているか?
仮想モデルとして、従業員10人の卸売会社を考えます。取引先は30社、月間の注文件数は200件。注文の受け方はFAX、メール、電話がほぼ均等とします。
1件の注文をエクセル台帳に転記するのに5分かかるとすると、200件で1000分、約17時間です。月末に台帳同士を突き合わせて確認する作業に、さらに10時間ほどかかるとします。
| 作業 | 月あたりの時間 |
|---|---|
| 注文の転記 | 約17時間 |
| 月末の突き合わせ確認 | 約10時間 |
| 合計 | 約27時間 |
この27時間はあくまで一つの目安です。取引先の数や注文の頻度によって変わります。ただ、この規模の会社では毎月これくらいの時間が注文履歴の整理だけに消えている、というのが実感に近い数字です。
AIに何を読み込ませれば注文履歴は片付くのか?
用意するものは新しく買う必要はありません。今ある3つのものだけです。
- FAXで届いた注文書(写真に撮るか、スキャンしたもの)
- 取引先ごとのエクセル台帳(過去の注文が入っているもの)
- メールで届いた注文の文面
これらをAIに見せて「日付、取引先名、商品名、数量、金額を抜き出して、一つの表にまとめて」と頼みます。それだけで、バラバラだった記録が一つの表に集まります。
手書きのFAX注文書でも、写真の文字がある程度はっきりしていればAIは読み取れます。かすれて読みにくい場合は、その部分だけ人が確認して直せば十分です。
AIに整理させると入力ミスや重複はどう防げるのか?
よくあるミスは3つです。
- 同じ注文を2回打ち込んでしまう
- 取引先名の書き方がバラバラ(「株式会社◯◯」と「◯◯(株)」が別会社として扱われる)
- 数量の単位を間違える(箱と個を取り違える)
重複は、AIに「同じ日付・同じ取引先・同じ商品の注文が2件以上ないか確認して」と頼むことでかなり見つかります。
取引先名の表記ゆれは、正しい会社名の一覧をあらかじめ作っておき、AIにその一覧と照らし合わせて統一してもらう方法が確実です。
数量の単位は、取引先ごとに「箱」で数えるのか「個」で数えるのかを最初に決めておきます。AIに任せきりにせず、最後は人がざっと目を通す工程を残すことをおすすめします。
導入の最初の一歩は何をすればいいのか?
いきなり全部を整理しようとすると挫折します。まずは小さく始めます。
- 直近1か月分の注文書とメールを1つのフォルダに集める
- それをAIに読み込ませて表にしてもらう
- 出てきた表を人の目で確認し、おかしい部分を直す
- うまくいったら、対象を3か月分、半年分と広げていく
例えば新潟県新潟市で従業員10人の卸売会社なら、まず取引先の多い上位5社分から試すとやりやすいはずです。新潟市の卸売業がAI受発注の整理を進める場合も、この手順は基本的に変わりません。
最初の1か月は「本当にちゃんと拾えているか」を確認する期間だと考えてください。慣れてきたら、対象を広げるスピードも上げられます。どこから手をつければいいか迷う場合は、無料のAI業務診断で今の業務を整理してみるのも一つの方法です。
在庫の発注タイミングとは何が違うのか?
注文履歴の整理と、在庫をいつ発注するかは、似ているようで別の話です。
今回話しているのは「取引先からもらった注文を、どう記録して後から探しやすくするか」という話です。一方、在庫の発注タイミングは「自社が仕入れ先に、いつ・どれだけ注文するか」という話になります。
注文履歴が整理できると、どの商品がいつ・どれだけ売れたかが見えやすくなります。それが在庫の発注タイミングを考える材料にはなりますが、話としては別の記事のテーマです。受発注や在庫の自動化全体については、受発注・在庫の自動化メニューにまとめています。
費用はどれくらいかかるのか?
最初の1か月は、無料で使えるAIで十分試せます。取引先5社分、月40件程度の注文履歴であれば、費用をかけずに手順の確認ができます。
本格的に毎月の作業として組み込む場合は、月数千円のAI利用料や、表への出力先を整える作業が必要になることがあります。外部に整理の仕組みづくりを頼む場合は、依頼する範囲によって費用が変わります。この考え方はAI導入の費用の考え方で詳しく説明しています。
国が用意している補助金を使える場合もあります。詳しくはAI導入に使える補助金を確認してください。自治体独自の制度がある場合もあるので、事例エリアの商工課や商工会議所に問い合わせてみるのも手です。
自分の会社に合うかどうか、どう判断すればいいのか?
取引先が多く、注文の受け方がFAX・メール・電話とバラバラな会社ほど、整理の効果は大きく出ます。逆に、取引先が数社で、すでに1つの台帳にまとまっている会社では、今の方法のままでも大きな問題は起きにくいかもしれません。
卸・小売業でどんな作業がAIに向いているかは、卸・小売業向けのAI活用にも具体例をまとめています。まずは直近1か月分だけでも、今ある注文書やメールをAIに読み込ませてみることから始めてみてください。