介護施設がAIで減らせる書類作業とは
介護施設が減らせるのは、記録作成と申し送りの書類作業です。判断そのものは人が行いますが、文章にする作業はAIに任せられます。うまく使えば、職員の負担は大きく下げられます。
なぜ介護施設は書類作業がこんなに多いのか?
介護の現場では、法律で記録を残すことが決められています。利用者の様子や介助の内容を、毎回書き残す必要があるからです。
具体的には、次のような書類があります。
- 介護記録(食事・排せつ・入浴などの様子を記録するもの)
- 申し送りノート(次の勤務の職員に伝えるための引き継ぎメモ)
- 家族向けの報告書(利用者の家族に状態を伝える書類)
- 事故やヒヤリハットの報告書(転倒などがあったときの記録)
これらは1人の利用者につき1日に何度も書きます。職員が20人いる施設なら、1日で何十件もの記録が積み重なります。夜勤明けに記録を書き終えられず、残業になるケースも珍しくありません。
AIに任せられる書類作業は何か?
AIが得意なのは「話した内容を文章にする作業」です。介護の現場では、次のような場面で使えます。
- 介助が終わった直後に、スマートフォンに向かって内容を話す(「〇〇さん、昼食は全量摂取、排せつは自立」など)
- AIがその音声を聞き取り、記録の形に整えた文章を作る
- 職員が内容を確認し、必要があれば直して保存する
この方法なら、メモを取る手間とパソコンに打ち込む手間の両方を減らせます。手が離せない介助の合間でも、話すだけで記録の下書きができるからです。
また、家族向けの報告書や、月ごとの状態報告書のような「決まった形の書類」も、AIに下書きを作らせることができます。これまでの記録をもとに、AIが文章の形にまとめてくれるので、職員はそれを読んで直すだけで済みます。
AIに任せてはいけないことは何か?
AIに任せられるのは「文章を作る作業」だけです。利用者の状態がどうか、次にどんな介助が必要かを判断するのは、必ず人が行います。
例えば、AIが「昨日と比べて食事の量が減っている」と文章をまとめることはできます。しかし、それが体調の変化なのか、単に好みの問題なのかを判断するのは、職員や看護師の仕事です。AIの文章はあくまで下書きであり、最終的な判断と責任は人にあります。
この線引きを最初にはっきりさせておくと、職員も安心してAIを使えます。「AIに判断させられるのでは」という不安が、導入をためらう一番の理由になりやすいからです。
千葉県柏市の介護施設を例に試すと、どれくらい変わるのか?
ここで紹介する数字は、実際の施設のものではなく、仮に作った例です。柏市内で職員20人が働く介護施設を想定します。
| 項目 | AI導入前 | AI導入後(仮の数字) |
|---|---|---|
| 記録作成にかかる時間(1人1回あたり) | 約20分 | 約5分 |
| 1日の記録件数(施設全体) | 60件 | 60件 |
| 1日に浮く時間(施設全体) | ー | 約15時間分の作業が短縮 |
この仮の数字だと、1日15時間分の作業時間が浮く計算になります。これは月に直すと、職員1人がまるまる1か月働く時間に近い量です。実際にどれだけ減るかは、記録の量や施設のやり方によって変わります。まずは自分の施設で試して、実際の時間を測ってみることが大切です。
まず何から始めればいいか?
いきなり全部の書類をAIに置き換える必要はありません。むしろ、その進め方は失敗しやすいです。
おすすめは、次の順番です。
- 記録の種類の中から、一番件数が多いものを1つ選ぶ(例えば「食事・排せつの記録」)
- その様式だけ、1週間だけAIを使って試す
- 実際にかかった時間と、記録の読みやすさを職員に確認する
- 問題がなければ、他の記録にも広げていく
最初から申し送りノートと報告書を同時に変えようとすると、職員が混乱します。1つずつ確実に定着させる方が、結果的に早く全体に広がります。
こうした導入の進め方や、どの作業から手をつけるべきかで迷う場合は、無料のAI業務診断で現状を整理してから決めるという方法もあります。
使える支援制度はあるか?
AIの導入には、パソコンや使う仕組みの費用がかかります。国が用意している「IT導入補助金」のような制度を使えば、費用の一部をまかなえる場合があります。
ただし、制度の内容や対象になる条件は毎年変わります。介護施設が対象になるかどうかも、その年の制度によって違います。申請には書類の準備が必要なので、早めに調べておくと安心です。都道府県や市にも独自の支援がある場合があるので(柏市の例なら千葉県と柏市)、市の商工担当課や商工会議所にも聞いてみてください。
補助金の考え方や選び方について詳しく知りたい場合は、AI導入に使える補助金や補助金の選び分け方のページも参考にしてください。費用の全体像を先に知っておきたい方は、AI導入の費用の考え方も合わせて確認しておくと、予算の見通しが立てやすくなります。
まとめ:何から手をつければいいか?
介護施設で減らせるのは、記録作成と申し送りの書類作業です。AIに文章化を任せ、判断は人が行うという役割分担を守れば、無理なく導入できます。
まずは記録の種類を1つ選び、1週間だけ試してみることから始めてください。実際にかかった時間を測ることで、自分の施設に合うかどうかが見えてきます。柏市に限らず、地方の介護施設で導入を進める際の考え方は、依頼先の選び方のページでも整理しています。